アドゥワはなぜ失敗したのか
実はここにもアドゥワ
試合に負けたりハラハラする場面が続いたりすると、投手交代が早すぎとか遅すぎとか、どの投手を出すべきだったなどとファンは言う。それを酒の肴にするのも野球の楽しみ方だ。だが、喫緊の課題である投手陣の立て直しを緒方監督はどのように考えているのかを想像してみるのも、野球の楽しみ方であろう。その観点から阪神3連戦の投手起用を振り返ってみる。
第9戦T3-5C:先発・大瀬良は、阪神を0に抑えていたので8回も続投させるかもと思ったが、7回100球で降板させた。しかし、救援したジャクソンが四球と安打で3点取られ、⅔回しかもたなかった。続く今村も1死も取れず降板。結局、中崎が8回・9回と回を跨いで抑えた。試合経過からすれば、典型的に8回ジャクソン・9回中崎の勝利の方程式の筈だった。しかし、ジャクソンの不調、今村の登板、中崎の回跨ぎは想定外だった。
第10戦T3-11C:阪神を0に抑えていた先発・野村は105球になった5⅔回で降板。次に登板した左腕若手・飯田は⅓回を抑えた。6回はアドゥワがマウンドに上がったが、3点を失い1死も取ることなく永川に火消しを託した。8回はジャクソン、9回は中崎ではなく今村で事なきを得た。
第11戦T6-11C:5つの四死球を出し不安定な岡田ではあったが、取り敢えず略5回を失点3点以内に抑え、まがりなりにも先発の義務を果たした。欲をいえば、6回きちっと投げ切って欲しかった。飯田にワンポイントを任すも失敗し、ベテラン・永川の応援を得ることになった。7回は今村。期待に反して失点3で⅓回しかもたなかった。ピンチでマウンドに上がったアドゥワにとって相当のプレッシャーだったと思うが、7回の⅔を切り抜け、更に8回も0に抑えた。これは大きな自信になっただろう。最後は中崎。
監督は、①目の前の試合、特に勝てる試合は勝つ、②残り80試合近くあるシーズンを通じて戦力を維持する、③新戦力の台頭を促す、④投手陣を立て直す、の4連立方程式を解かねばならない。その解は以下の通りであろう。
✿ 先発6枚のうち、大瀬良・岡田・野村・ジョンソン・九里は規定路線だ。なけなしの5投手であり、シーズンを通して大切に使いたい。故に、100球を目途として投げさせる。回数として6~7回。但し、8回を終わって100球程度で且つ投球内容・疲労度・点差を考え適切と判断する場合は完投もあり得るが、極力それは避けたい。
✿ 先発6枚目が頭痛の種だ。福井、薮田、高橋昂、中村祐、フランスアなどから調子のいい者を起用する。6枚目が投げるときは、ロングリリーフも準備しなければならない。後半戦で誰か1人出てくれば、チーム成績がより安定する。
✿ 8回ー9回はジャクソンー中崎が基本路線ではあるが、疲労の蓄積を考えれば夏場以降は代役を作っておく必要もある。先発が7回までもたない場合もあるので、その場合は誰が8回に繋いでくれるかだ。これらの役割は、今村、一岡、中田、永川、アドゥワ、飯田、藤井、中村恭、長井、カンポス、佐藤などから調子のいい者を選ぶことになる。
✿ 今村、一岡、中田、佐藤は経験もがあるので、コンディション作りは自分でやろう。永川はベテランではあるが、昨年手術をし投法も変えたので、半年くらいは慣らし運転が必要。若手は体力を付けると同時に、経験を積ませ、動じない精神力も養わなければならない。ここの処、永川、アドゥワ、飯田がよくマウンドに上がるのは、そういう狙いがある。オールスター以降、この3人のうち1人でも2人でも安心して1回~2回を任せられるようにする。そうなれば、他の投手の負荷が減るので相乗的効果を生み、投手陣はいい方向に回りだす。
✿ とは言え、お試し登板にはリスクは付きもの。そこは、たとえ投手が打たれても、それ以上の点を何とか取ろうというカープ打線にカバーして貰い、勝ちを拾う。幸いカープの逆転力は以下の通り抜群である。
2018年球団別逆転勝ち数&逆転負け数(6月24日終了時)
逆転勝ち 逆転負け
・広島 20 12
・阪神 9 13
・DeNA 13 14
・巨人 11 13
・中日 15 15
・ヤクルト 13 15
✿ それを可能にするのはチームの団結力。投手が駄目だから負ける、打てないから負けるなどという陰口が出るようでは駄目だ。そのためには、3連覇という共通目標を選手に強く意識させ、それぞれの立場で「勝つためにはどうするか」を考えさせることに腐心する。この目標のため、コーチや選手会長の曾澤・ベテラン新井などが自発的に一肌脱ぐようなチームの雰囲気を作る。
緒方監督の頭はこんなところであろう。中期目標・短期目標を持ち且つ現状を認識して采配する。それでも、第11戦の今村は投げさせたら絶不調。そういう想定外は起こるもの。そんなのに一喜一憂していたら監督は勤まるまい。直近のコンディションやブルペンでの様子から、不調を見抜けなかった担当コーチの責任とも言えるかも知れないが、そこは選手とて生身の人間。体調や精神状態のメカニズムは超複雑である。何しろ人間の脳には、天の川に浮かぶ星の数以上の神経接続があるのだから、コーチが何時間話し合おうと、目をひん剥いて観察しようが、簡単にわかるものではない。
昨日の対阪神第11戦も、こんなことを思いながらテレビを見ていた。だものだから、野間・松山・曾澤の活躍や神ってるとも言える誠也の満塁ホームランに目を引かれたのではあるが、私は飯田・永川・アドゥワにかなり注目した。飯田は残念だったが、永川とアドゥワは今後を期待させてくれた。
アドゥワ 関連ツイート
※鬼門の横浜スタジアムでまたしても劇的敗戦。明日…
・大瀬良6回1失点
→走塁時に足を痛め降板
・誠也先制適時打
・大瀬良適時打放ち早くも6打点
・バティスタソロで加点
・ジャクソン3ラン浴びる
→大瀬良の勝ち権利消滅
・アドゥワ打たれサヨナラ負け
→連勝ストップ