喪失、こたえてよ。メールじゃなくて、私の質問に。
頭が真っ白になった
「事故で頭部を強打して数時間、意識不明に陥りました。意識が戻った後、検査をしたんです。その時の検査で発見されたんです。自分が誰なのかは分かるみたいですが、その他の事は覚えていない…つまり…記憶喪失です」
松本は言い終えた後、申し訳そうにチラリと俺を見た
「残念ですが…恋人である櫻井さん…貴方の事も覚えいませんでした」
運転する松本の方に体を乗り出して話を聞いていた俺だが、
ドスン…
あまりのショックに言葉もなくシートに沈み込み進行方向をぼんやり見つめた
俺の目には何も映らない
俺の耳にも何も聞こえない
ただ、
キィーン…と静かな中に耳障りな音が聞こえるだけ
「・・・さん?・・・井さん?・・・櫻井さん?しっかりしてください」
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえた
何も映らない目を声のする方に向けた
「櫻井さん、代丈夫ですか?」
心配そうに俺の肩を揺さぶりこちらを見る松本がいた
車を路肩に止めたようだ
俺は言葉もなく松本さんを見つめる
「ショックなのは分かります…私も非常に驚きましたから。でも、医者が言うには事故の衝撃で一時的に記憶を無くして混乱しているためではないか、とのことでした。そんなに遠くない時期に思い出すらしいのですが…それが明日なのか?一週間後なのか?1ヶ月後なのか…それは分かりません。徐々になのか、一度に全部なのか、それは本人次第でしょう」
「その事を智くんは知っているんですか?」
「はい。知っています。本人が希望したので私の方から説明しました。家族のことも思い出せなかったので事前にお聞きしていた恋人である貴方に連絡を取らせていただきました。大野のご家族のことはご存知ですか?」
「すみません…僕も…まだお会いしたことがありません」
「そうですか…そうなると、申し訳ありませんが貴方に大野の事をお任せするしかなさそうですね。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「迷惑だなんて、智くんは…智くんは…俺の大切な人なんです。迷惑なんてことはありませんから…」
込み上げてくる涙をぐっと飲み込んだ
泣いている暇はない
そう言えば…
「あの…松本さんは…俺と智くんのこと…」
「ああ…大野から聞いたときはびっくりしました。だけど…貴方の事を話す大野を見ていたら…凄く幸せなんだなぁって伝わってきました。心から愛しているんだなって。私には理解できないことですが、そういう愛もあることは分かっています。ご心配なく。」
「智くん…マジで恥ずかしい。他所でそんなこと言うなよ…」
堪えていた涙が手の甲にポタリと落ちた
俺は静かに泣いた
松本さんは車を発進させて運転に集中してくれた
車の窓から景色を見ながら智くんのことを、ぼんやり考えていた
既に時間の感覚は無い
静かに車が止まった
「櫻井さん、病院に着きました」
顔を上げると病院の駐車場だった
「大丈夫ですか?ちょっとお茶でもして大野に会いに行きましょうか」
松本さんが俺を気遣ってくれた
俺は両手の拳にギュッと力を入れて顔を上げた
「いえ、直ぐに智くんに会いたいです。智くんの元に連れていってください」
松本さんと目が合った
「分かりました」
松本さんが静かにシートベルトを外したので俺も急いで外した
智くん…やっとココまで来たよ
遅くなってごめんね
心細いでしょ?
これからは俺が一緒だから…
俺は気持ちを新たに車のドアを開けて
車から降りた
続く…。
母なる地球を思わせる喪失
頭が真っ白になった
「事故で頭部を強打して数時間、意識不明に陥りました。意識が戻った後、検査をしたんです。その時の検査で発見されたんです。自分が誰なのかは分かるみたいですが、その他の事は覚えていない…つまり…記憶喪失です」
松本は言い終えた後、申し訳そうにチラリと俺を見た
「残念ですが…恋人である櫻井さん…貴方の事も覚えいませんでした」
運転する松本の方に体を乗り出して話を聞いていた俺だが、
ドスン…
あまりのショックに言葉もなくシートに沈み込み進行方向をぼんやり見つめた
俺の目には何も映らない
俺の耳にも何も聞こえない
ただ、
キィーン…と静かな中に耳障りな音が聞こえるだけ
「・・・さん?・・・井さん?・・・櫻井さん?しっかりしてください」
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえた
何も映らない目を声のする方に向けた
「櫻井さん、代丈夫ですか?」
心配そうに俺の肩を揺さぶりこちらを見る松本がいた
車を路肩に止めたようだ
俺は言葉もなく松本さんを見つめる
「ショックなのは分かります…私も非常に驚きましたから。でも、医者が言うには事故の衝撃で一時的に記憶を無くして混乱しているためではないか、とのことでした。そんなに遠くない時期に思い出すらしいのですが…それが明日なのか?一週間後なのか?1ヶ月後なのか…それは分かりません。徐々になのか、一度に全部なのか、それは本人次第でしょう」
「その事を智くんは知っているんですか?」
「はい。知っています。本人が希望したので私の方から説明しました。家族のことも思い出せなかったので事前にお聞きしていた恋人である貴方に連絡を取らせていただきました。大野のご家族のことはご存知ですか?」
「すみません…僕も…まだお会いしたことがありません」
「そうですか…そうなると、申し訳ありませんが貴方に大野の事をお任せするしかなさそうですね。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「迷惑だなんて、智くんは…智くんは…俺の大切な人なんです。迷惑なんてことはありませんから…」
込み上げてくる涙をぐっと飲み込んだ
泣いている暇はない
そう言えば…
「あの…松本さんは…俺と智くんのこと…」
「ああ…大野から聞いたときはびっくりしました。だけど…貴方の事を話す大野を見ていたら…凄く幸せなんだなぁって伝わってきました。心から愛しているんだなって。私には理解できないことですが、そういう愛もあることは分かっています。ご心配なく。」
「智くん…マジで恥ずかしい。他所でそんなこと言うなよ…」
堪えていた涙が手の甲にポタリと落ちた
俺は静かに泣いた
松本さんは車を発進させて運転に集中してくれた
車の窓から景色を見ながら智くんのことを、ぼんやり考えていた
既に時間の感覚は無い
静かに車が止まった
「櫻井さん、病院に着きました」
顔を上げると病院の駐車場だった
「大丈夫ですか?ちょっとお茶でもして大野に会いに行きましょうか」
松本さんが俺を気遣ってくれた
俺は両手の拳にギュッと力を入れて顔を上げた
「いえ、直ぐに智くんに会いたいです。智くんの元に連れていってください」
松本さんと目が合った
「分かりました」
松本さんが静かにシートベルトを外したので俺も急いで外した
智くん…やっとココまで来たよ
遅くなってごめんね
心細いでしょ?
これからは俺が一緒だから…
俺は気持ちを新たに車のドアを開けて
車から降りた
続く…。
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